2013/04/04

コットンクラブに活きる職人芸。

コットンクラブのサウンドは本物のプロフェッショナルが職人技で作っていた。
タック&パティさんの今回のツアー見学でその現場に出会い、
たぶん僕にとって今回一番の感動的な光景だった。
裏方だからこそ見ることができたその素晴らしい光景を
ブログをよむみなさんにも伝えておきたいと思う。

当日ぼくは早くに現場に到着し、サウンドチェックから見学させていただいた。
タック&パティさんのニーズに素早く応え、あっと言う間に音色が決まって行く。
より自然に、それでいてクリアな音色。
演奏者のダイナミクスが全て伝わるサウンドになってサウンドチェックは終了。
それだけでもエンジニアのみなさんは凄いと思うが、
コットンクラブのエンジニアのMさんの仕事はそこだけでは終わらなかった。

故あってファーストステージを見逃したのち参加したセカンドステージ。
もう万事OKなんだろうなと思いながら音楽に身を任せていたのだが、
エンジニアのMさんとツアーマネージャーのALさんがしきりと会話をしてる。
ALさんに通訳として呼ばれて話をきくとライブのボリュームについてだった。
Mさんの提案は「もう少し大きくしてはどうか」であった。
ALさんは風邪で耳の聞こえが悪かったので代わりに僕が判断することになった。

僕は素早く客席のサウンドが一番のモニターしやすい場所に移動してしばしリスニング。
その後に後ろへ戻りリポートした。
「今のままでもダイナミクスとリンクした良いボリュームだと思う。
けど伝わり方がソフトでもある。もっとエキサイティングに伝えるなら、
1dbボリュームをあげても良いと思うが演奏者のモニター状況も変わるので
そのリスクをとるべきかどうか。」
たった1dbのボリューム変更だが大きな決断だと僕は思い、躊躇した。

Mさんに言われた「奥沢さんが決めてください。どっちですか?」
その言葉を受けて決断することができた。
「1db上げましょう」
MさんはPAブースへ。
僕は先ほどのリスニングポイントへ移動した。
オーディエンスの方には気づかないであろう些細な音量の変化。
でも僕らにはものすごく大きな変化に感じた。
音がよりクリアになり、差し込んでくるようになった。
音量の変化というよりも届き方の変化だが効果は絶大だった。
そしてライブはそれまでのライブの中で一番盛り上がり、
一番人々の心に触れる深い感動があるステージなった。

その後もMさんは時折PAブースから出てきてはライブの最後まで
いろんな場所でモニタリングを繰り返していた。
まさにプロフェッショナル。
本物の職人芸を見せてもらってとても感動した。
そしてその仕事に少しだけ携わることができて誇らしかった自分がいた。

コットンクラブのサウンドは毎日、毎晩こうやって
凄みのある職人芸で運営されている。
これからもたくさんの素晴らしいミュージシャンのライブを、
僕はコットンクラブで聞きたいと思う。
そしていつか、自分もそのステージへ上がることを、必ず叶えたい。