もうひとつレコーディング作品づくりにおいて大事なのはエモーションだ。録音という繊細な作業とエンジニアリング的なマインドで関わっているとどうも演奏から魂が抜けていってしまう。タイミングをあわせることに必死になる。音をちゃんと出す事に気を取られる。ミストーンがでないようにそーっと弾く。などなど心をこめた演奏とは真逆の技術的な問題に頭が傾きがちだ。Sonascribeのふたりも自分達で作ってきたトラックにはこの症状が顕著に現れていた。先に触れた技術的な問題に取り組みつつも演奏のエモーショナルな部分を手放さずに演奏にトライできるようになるには今しばらくは僕によるディレクションが必要かもしれないが、そういうディレクションに長年さらされてゆくうちに自然とそれがデフォルトになると思う。自分がそうであったように。だからこの先数年間、方法論を伝えて自発的な作業にまかせるのではなく側にいて叱咤激励をしながら面倒をみようと決意した。やはり人材育成には時間がかかる。諦めずに相手を信じて何度でもおなじことを繰り返し言い続けようではないか。