ギターを教える生活を通して教育の在り方について気がついたことがある。
真に教わる人のスキルになる情報は感動体験を伴って伝達しなくてはならないということだ。
僕が教えている音楽は特にそれが大事だと思う。
ただ上手に弾ければ良い音楽になる訳ではない。
伝えたいと思う気持ちや、その楽曲を自分が演奏する意味を持たなくては演奏に説得力がでない。
その強い使命感を持つためにも過去の感動体験が大事だと思う。
音楽の理論や事象の話を言葉で伝えるだけでは感動体験にはならない。
感動体験を伴って伝えるためには教える人のその目の前でその事象を起こしてみせなくてはならない。
「こうやってメロディ弾くとつっけんどんに響くけど、こうやると優しく包み込まれてるように聞こえるでしょ?」
と言った具合に実際に弾いてみせることが最も大事な部分だ。
だから音楽の先生は演奏が上手な人でなくてはならないと思うし、アーティスト活動やライブ活動を通して感動体験を常日頃おこしている人物であるべきだと思う。
この感動体験を引き起こすには「Face to Faceのコミュニケーション」が欠かせない。
同じ空間にいること。
相手の目線や表情を観察しながら語ること。
言葉をキャッチボールし会話に流れを作ること。
目の前で説明してる現象をおこしてみせること。
熱意を持って大げさに語り、感動体験を共にすること。
E-Learningにも興味があって数回トライはしているが、未だに感動体験を導けたという手応えのあるレッスンには至っていない。
少なくとも定点からの映像しか発信できず、ラグタイムのあるメディアにおいては不可能だと感じる。
E-Learningの中で感動体験を作るには何台ものカメラ、脚本、照明、緻密なプレゼンテーションとテレビ局並みのノウハウが必要で、それに適したメディアはYouTubeだけだと思う。
E-Learningの利点は一言でいえば「会って話し合う前の下地となる情報共有」ではないだろうか。
その利点を理解した上で今後は付き合ってゆきたいと思うけれど、どんなにメディアが進化しても「現場教育」には到底及ばないと思う。
だからこそ時代に逆行しているかもしれないけれど、僕は教室や現場を今よりも重んじて大切にしてゆきたいと思う。