「ある音を弾くとその音は次に、特定のある音にゆきたがる(解決する)性質がある」という考えだ。
メジャースケールでドレミを弾いているときに「ドのシャープ(C#)」を弾いた場合、その直後に「ド(C)」に解決しようとするように僕らには聞こえる。
音の性質というよりも人間の感性についての定義かもしれないが、いずれにせよ音には意思があって自分である方向に進もうとするのは事実だ。
このTendency Toneはスケール外の音がスケール内に解決する動き以外にもDiatonic Scale内でも起きているように思う。
例えば「ド、ド、ド、ド、レ、」と演奏されると最後のレはドに回帰しようとする。
同じ流れで「ミ、ミ、ミ、ミ、ファ、」と演奏するとファはミに回帰しようとする。
もちろん異論はあるだろう。だって音の選択は自由だ。
「ミ、ミ、ミ、ミ、ファ、ソ」と弾いても良いメロディだ。
でもこのフレージング上でファの音がミに回帰しようとする力はソに直進する力よりも何倍も強い。
実際に弾いてためしてみてほしい。
こういった流れの現象はTendency Toneのカテゴリでは説明しきれないのでMelodic Gravityとでも名付けよう。
音は、メロディは自分の意思をもって重力に引き寄せられるようにして流れている。
優れたComposition MelodyもImprovisation Melodyも調べてゆけばこの重力の法則がそこかしこに現れてくる。
ChromaticizmもDelayed Resolveもこれらの現象のひとつの形だし、そのアプローチの積み重ねによって集合体のようにメロディはできているから重力の影響から逃れる事はできない。
この重力の流れにObayして流れにのってゆけば自ずと良いメロディになる。
音の意思に従い重力に従ってしまえば結果みんな同じメロディに帰結してしまうのも事実。
没個性のメロディが大量生産されるだけかもしれない。
イノベーティブな音楽を作りたい人はこの重力に逆らえば良い。
普遍的なメインストリームを歩む人はこの重力を感じる力を養い、あとは従えばよい。
どちらの頂き尊い場所だ。
僕自身はしばし、自我を忘れてこの重力に従って音楽をやってみようと思う。
その為に今はコードにせよ伴奏にせよアドリブにせよ、頭の中に事前にイメージを持たないようにしている。
偶然出てきた音を良く聞いて、次に進みたい方向がどっちか音自体に選択させてあげたいと思う。